コンピュータの中の世界

この世界は巨大なコンピュータ上で計算されているデータに過ぎないという考え方がある。人間がコンピュータ上で物理シミュレーションをするように、どこかの開発者が幾つかの物理法則と初期状態を入力し、プログラムの実行と共にこの世界が始まったというイメージ。

その巨大なコンピュータのコンセントが抜けてしまった時、どうなるのかを考えてみる。この世界はなくなるのか。

仮に演算結果は逐一、何かに記録されていたとすると電源が切れても後からいつでも記録された時点から再スタートできる。だとするとコンピュータの中の世界では、電源が切れたことなど何も関係なくそんな事が起きたことすら分からない。もし演算結果が記録されていなくて、電源が切れると同時にデータが失われたとするとこの世界はなくなるのだろうか。
そうではないと思う。そもそも物理法則と初期状態が与えられた時点で、世界の最後まで全ては確定していて、コンピュータの計算はそれを辿るだけの作業に過ぎない。計算に何億年かかろうと一瞬で終わろうとこの世界には何も関係なく、計算などはじめから行わなくても何も変わらないのだ。1+1は計算前後で変わらない。これは物理法則に確率的な要素があったところで同じだろう。計算するごとに世界は違ったものになるだろうが、何兆の何兆乗パターンの世界があろうと、物理法則と初期状態から全て求められる。

結局のところ、この世界がコンピュータ上で計算されているのかどうかは重要ではない。いろいろな物理法則、微妙に異なるパラメータの世界は無限に考えられ、それぞれの世界は計算しようがしまいが数学と同じようにいつまでも変わらないのだろう。